確か昨年の餅つきは小雨が降っていて寒かった。
山梨の田舎にある義母の実家でおじいさんと叔父が毎年おこなっている。
餅をつくのはかなりの労力が必要で、
しばらくついていると腕に力が入らなくなって
杵を臼の真ん中に当てるのが難しくなってくる。
杵を臼にぶつけると杵のはじが木っ端となって餅に飛び散る。
それを指でいちいちつまんで取らなくてはいけなくて、
杵の先端もナイフで整えないといけない。
小声で「すいません」と言うのだが、
さすがに三度目にぶつけたときは叔父もおもわず舌打ちをする。
それがなんとも気まずい雰囲気だった。
そんなことを思い出しながら、
今年も餅つきに行ってきた。
よく晴れた気持ちのよい天気だった。
餅米をちゃんとたき火の釜で蒸す。
米の良い香りがする。
木の蓋を外して米をつまんで固さを確かめる。
僕はちょうどよい加減はわからなかったが、
熱々の米を口に入れると餅米の甘みがしてもちもちとした食感がたまらない。
つく前でも抜群にうまい。
93歳のおじいさんと叔父さんとKくん。
餅をつく家が少なくなったというが、
このうちは三世代で餅をつく。
昔は機械で餅をついたこともあったようだが、
やっぱり手でついた方がうまいということで餅つきが復活したとのことだ。
蒸した米を少しずつ回転しながらすり潰していく。
これはかなり難しそうだ。
まだまだ新米の自分は近くで眺めることしかできない。
来年あたり挑戦させてもらえるかな。
その場で食べる用の餅。
もちろん、うまい。
これを食べたいがために毎年餅つきに参加するのだ。
どんどんとつぎつぎにつく。
子供のときから餅つきをしていると男らしく育つのかな。
豆餅。
赤い線が入ったのは砂糖入り。
柚の皮もはいっていて、ふつうの餅に飽きて食べるとまたうまい。
ついつい手が伸びてしまう。
保存用に切り分けていく。
数が数なので疲れる作業だ。
代わりますと言ったが結局叔父が全部切った。
大事な仕上げは他人に任せられないのだろうな。
丁寧に丁寧に手を進める。
家族がうまいうまいと言って食べる、この冬を元気に過ごすための宝物に見えてくる。
大根おろし、海苔巻き、きなこ、あんころ餅。
それぞれうまい。最高の御馳走だ。
いまはなきおばあさんが叔母さんに伝えたけんちん汁。
餅つきのときは作るように言われたとのこと。
野菜から甘みが出ていてこれまたうまい。
家族で餅つき、なんて贅沢なことなんだろう。
子供としては面倒くさいと思う時期もあるだろうけど、
本当に美味いものは死ぬまで忘れない。
次回はぜひ下準備から餅を切るところまで関わりたい。
伯父さんよろしくお願いします!